楽しい音楽のひと時

 テレビ朝日「題名のない音楽会」、60周年記念。今回は「音楽の花束」と称した特別企画。誰でも楽しめる好企画だった。出演は上野耕平、小林愛実、鈴木優人、角野隼斗、反田恭平、藤田真央、藤原道山、ブルース・リウ、本條秀慈郎、宮田大、務川慧悟、LEO。バッハに始まり、バッハに終わるという内容だった。
 鈴木優人が演奏したバッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 BWV846 第1番 プレリュードに始まり、反田恭平がショパン ワルツ第6番 Op.64-1「小犬のワルツ」、角野隼斗が自作「大猫のワルツ」を演奏、犬と猫の対比が面白かった。サクソフォン、上野耕平がボノー「ワルツ形式によるカプリス」、反田恭平、小林愛実、務川慧悟によるラフマニノフ「6手ピアノのための小品」よりワルツ、聴き応え十分だった。藤原道山、本條秀慈郎、LEOによるバルトーク『ルーマニア民族舞曲』より第5曲「ルーマニアのポルカ」 第6曲「速い踊り」、和楽器のバルトークも面白く、聴き応えがあった。LEOが自作「松風」、新しい日本音楽の世界を構築した一品で、これからに注目したい。注目株のピアニスト、藤田真央が野平一郎「音の旅」より「秋祭り」、野島稔亡き後、東京音楽大学学長となった野平の作品を取り上げた。チェロの宮田大はバッハ 「無伴奏チェロ組曲 第3番」第5曲ブーレⅠⅡが味わい深かった。最後は、ブルース・リウによるバッハ 「フランス組曲 第5番」第7曲ジーグで締めくくった。
 音楽の花束と称し、楽しい一時を過ごせるようにした好企画で、どんなものが出るかなという、ワクワク感があって楽しかった。この番組が1964年、東京交響楽団救済のために始まったとはいえ、黛敏郎から羽田健太郎、佐渡裕、五嶋龍、石丸幹二へと引き継がれ、今日に至ったことは大きい。佐渡は、レナード・バーンスタイン「ヤング・ピープルズ・コンサート」を下敷きにしていたという。こうした姿勢も評価したい。民間放送のクラシック番組として最長寿の番組として意義深い。黛の場合、自分の政治主張を出す面もあって、テレビ朝日側と対立したことがある。当初は東京12チャンネル(現・テレビ東京)だった。NETテレビに移り、テレビ朝日と改称、足掛け60年にわたって続いたことは素晴らしい。
 そろそろ、30分の枠から45分、1時間と放送時間を拡大することを考えては如何だろうか。交響曲でもモーツァルト、ベートーヴェンの交響曲をはじめ、協奏曲も全曲演奏可能となる。オペラでもハイライト形式で上演できる。室内楽などもたっぷり楽しめる。その意味でも、放送時間拡大を考えていただきたい。
 誰でも音楽を楽しみつつ、学べる場として「題名のない音楽会」が続き、私たちに長く親しまれるクラシック音楽番組として語り継がれる存在となり、民間放送では数少ないクラシック音楽番組として、これからも頑張ってほしい。
 オスカー・ワイルドの言葉を引用する。
「花は自らの喜びのために咲く。」
番組60周年記念を改めて祝したい。

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