山田和樹のこども未来オーケストラが始動した 1

 テレビ朝日「題名のない音楽会」、山田和樹のこども未来オーケストラ、全体リハーサルが始まった。国内から集まった小学生から高校生たちとの顔合わせ、オーケストラがどう成長するか。リハーサルがプロセスとなる。
 ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」、オーケストラは楽譜のみに囚われがちである。指揮者も見なければならない。
「僕を見て。」
と言う山田、指揮者がいるなら、指揮者にも注意しなければならない。それがオーケストラである。オーケストラの楽員たちは、指揮者にも集中しなければならない。世界のオーケストラはもとより、日本のオーケストラも、楽員たちは指揮者にも最大の注意を払い、指揮者が思い描く音楽を伝える使命感がある。子どもたちとて同じである。
 子どもたちとの接し方を見ても、子どもたちの個性・人権を尊重しつつ、全体をまとめる山田の統率力・人間性を見る思いがした。子どもたちを1人の音楽家として接しつつ、最大の力を引き出せるようにしている。子どもの個性・人権を尊重しつつ、能力を発揮できるようにすること。音楽教育の基本である。ピアノのレッスンでも、子どもの個性・人権を尊重しつつつ、能力を引き出し、長所を伸ばす教育が進んでいるか。この点を考える時である。
 ベートーヴェン 交響曲第7番 Op.92 第1楽章主部。ホルンを担当する子どもたちに、杓子定規ではなく、枠を打ち破ることの大切さを伝えたこと。楽譜通りに演奏するだけではなく、音に生命力を与え、音楽を生き生きしたものにすることを求めていた。奏法にも指示を出した。枠を突き破る大切さ。大胆になることも音楽家に大切な要素である。今までの自分を打ち破れば、素晴らしいものが生み出せることを示した。
 ブラームス 交響曲第1番 Op.68 第1楽章 序奏部。冒頭のティンパニの強打。心に響くだけの音量の大切さを伝えた。コントラバスでは、ダウンで演奏することで、ブラームスの音楽の重さを伝えられることに気づかせた。ブラームスの音楽の重さ、渋さ。子どもたちが直に体験することにより、作曲家への理解を高められる。その際、子どもたちに考えさせる機会を与えたことは大きい。
 子どもたちの個性・人権を活かした音楽教育の在り方が、これからの日本の音楽文化を育て、支える原動力になる。山田のリハーサル風景からも伝わって来る。ピアノのレッスンなど、個人の音楽教室では、子どもの個性・人権を尊重しつつ、長所を見出し、活かすレッスンが重要である。練習方法も子どもたちに考えさせることも大切ではないか。音楽大学でのレッスンでも同様である。
 音楽大学に進んでも、自分の頭で見て、聴いて、考え、行動できるような学生を育て、音楽家として活躍できるようにすることが1番である。学生達もどんどん行動して、自分の音楽観を育て、はっきり主張できる環境作りも大切である。その意味でも、SNSで発信する学生たちが増えつつあり、繋がりも広まっている。ただ、SNSにも怖さがあることも知るべきである。
 山田の言葉である。
「キャンバスからはみ出る音がほしい。」
自らの殻を打ち破る力、これからの日本の音楽家たちへ贈る言葉でもある。

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