ブルース・リウ、「題名のない音楽会」に登場

 テレビ朝日「題名のない音楽会」、本日は2021年ショパン国際コンクールで優勝した中国系カナダ人ピアニスト、ブルース・リウが登場した。2位だった反田恭平がいろいろなエピソードを披露した。リウが反田の家にやって来た時、
「お腹が空いた。」
と言った時、4位に入賞した夫人、小林愛美がカツ丼をごちそうしたという。また、コンクールの順位発表の際、手品も披露した。司会の石丸幹二氏も手品に参加した。
 反田は、リーの音楽について、空間を自由に操ることができると評している。音楽家である限り、自由でいることは大切である。何でも縛りつけるだけではいけない。重い意味がある。
 まず、ショパン 幻想即興曲 Op.66。テクニック、音楽が一体化していた。歌も十分である。現在、リウがチャイコフスキーに取り組んでいるため、チャイコフスキーのピアノ作品から、四季 Op.37aより、6月 舟歌、4月 松雪草を演奏した。プレシチェーエフの詩に基づく「舟歌」のもの悲しさ、メランコリックな雰囲気が伝わった。マイコフの詩による「松雪草」は、春の喜びと共に、過去の思い出も匂わせた、彫りの深い作品である。ロシアの大地に根差した季節の作品を味わい深く聴かせた。
 後にソヴィエト連邦時代に活躍した指揮者、1958年に来日したアレクサンドル・ガウクによるオーケストラ版もある。こちらの方も聴いてみたい。ロシアの自然を伝える響きになっているだろうか。
 チャイコフスキーのピアノ作品では、「四季」、子どものためのアルバム Op.39がよく知られている。子どものためのアルバムは、妹アレクサンドラ・ダヴィドヴァの子どもたちへの贈り物となり、シューマンの子どものためのアルバム Op.68と共に、子どものための作品として、広く演奏、世界的に広まっている。ピアノ曲集にはOp.40 中級程度の小品、Op.72 18のピアノ小品もある。これらのうち、何曲か、スビャトスラフ・リヒテルなどが演奏しているとはいえ、「四季」ほどではないことが惜しまれる。
 今、ウクライナ戦争が続き、ロシアに対する目は厳しい。それでも、チャイコフスキーの音楽は世界中で演奏されている。バレエ「くるみ割り人形」Op.71も、クリスマスには上演される。チャイコフスキーもウクライナにいる妹の許にも足を伸ばし、子どもたちへの贈り物として、素晴らしい作品を残した。無意味な戦争はいつまで続くか。
 番組が30分ではもったいない。せめて、1時間くらいやってほしい。リウの音楽の魅力を伝えるにも、十分な時間ではないようである。コンツェルトなどを考えても、1時間はほしい。
 チャイコフスキーの言葉である。
「仕事、これこそ私の魂が渇望すること!」
チャイコフスキーはロシア音楽発展に寄与した。モーツァルト「フィガロの結婚」ロシア語訳は、今でも生命を失っていない。ブラームスとは、最初は折り合わなかったとはいえ、ハンブルクで交響曲 第5番 Op.64の上演があった際、聴きに来たブラームスも評価してくれたことがうれしかったことで、折り合えた。
 チャイコフスキーの死をめぐって、自殺を装って殺されたという説も出た。結局、コレラで亡くなったことに落ち着いても、今後、どうなるかだろうか。2040年、チャイコフスキー生誕200年に注目したい。

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