ギターとマリンバ 味わい深さがあった

 テレビ朝日「題名のない音楽会」、ギタリスト 村治佳織、マリンバ奏者 出田りあがギターとマリンバのアンサンブルによるコンサートとなった。日頃から仲良しの2人が、ギターとマリンバのアンサンブルによる、味わい深い一時を私たちの許に送って来た。
 まず、S.マイヤーズ 映画『ディア・ハンター』より「カヴァティーナ」、映画音楽として作曲されたとはいえ、私たちの耳に届くようになった1曲。村治のギターを引き立てるかのように、マリンバが寄り添っていた。味わい深かった。
 次は、G.フィンジ 『5つのバガデル』より第4番「フォルラーナ」、ギターとマリンバが見事に融合した演奏、味わい深さもひとしお、もう一度、じっくり聴いてみたくなった。
 最後は、M.ラヴェル 『鏡』より第4曲「道化師の朝の歌」 ピアノのための「鏡」から、有名な作品である。スペインとの国境に近い、バスクで生まれたラヴェルだけに、スペイン色豊かな作品である。村治のギター、出口のマリンバが見事な調和を見せ、スペインの香りが漂う演奏となった。
 「道化師の朝の歌」は、ラヴェル自らオーケストラ版を残し、日本では、1938年、ヨーゼフ・ローゼンシュトック(ジョゼフ・ローゼンシュトック)、新交響楽団(現在のNHK交響楽団)による初演の記録がある。ラヴェルは、ピアノ作品をオーケストラに編曲したり、ムソルグスキー「展覧会の絵」をオーケストラ編曲、「オーケストラの魔術師」とも言われる。バレエ音楽「ボレロ」「ダフニスとクロエ」「ラ・ヴァルス」「マ・メール・ロワ」が代表作である。「ボレロ」が一番よく知られ、私たちには親しみやすい作品となっている。
 ラヴェルの作品をギター、マリンバのアンサンブルで聴くと、違った魅力がある。スペイン色豊かな世界が広がる。じっくり味わいたくなる演奏だった。「カヴァティーナ」も、もう一度、じっくり聴いてみたい。ギター、マリンバのアンサンブルで、じっくり聴きたい作品がまだあるようにも思える。
 今回のような好企画が続くと、音楽の楽しみ方・味わい方にも変化が出て来る。新しい可能性を探ってほしい。ぜひ、番組の放送を45分から1時間に拡大してほしい。この点を考えていただくと、交響曲・協奏曲が全曲入るようになる。もっと、聴き応え・見ごたえある番組に成長できるように思える。ぜひ、考えていただきたい。今後の番組の在り方も変わっていける可能性がある。
 かつて、TBSで放送した「オーケストラがやって来た」は、2時間番組で、コマーシャルなしだった。「題名のない音楽会」も、45分から1時間に延長すれば、交響曲・協奏曲などがじっくり聴けるようになる。考えて欲しい。
 詩人トリスタン・クラングソルの言葉である。
「ラヴェルのビロードのチョッキの下に、皮肉っぽくやさしい心臓が鼓動している。」
そこには、フランスのユーモア・エスプリが香る。フランスの香りほど、ラヴェルの音楽には相応しいだろう。

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