ジャニーズとは何だったか 名古屋芸術大学、來住尚彦学長のセクハラ事件を斬る

 NHKスペシャル「ジャニー喜多川 アイドル帝国の実像」を見た。全体の感想としては、NHKとして真摯に向き合って制作した番組とは言い難いと言う声があった。その中で明らかになったことは、ジャニーズ音楽が人の心を捉えるもの、訴えかけるものがなかった。華やかに歌い踊るだけで、楽曲からのメッセージはない。
 1960年代、ビートルズ来日と共に起こったグループサウンズが日本のポップスの礎となった。1970年代から、フォーク、ニューミュージックといったシティ・ポップス中心となった。1980年代から、ジャニーズ音楽が中心を占めるようになった。バンド・ブームに乗って、様々なバンドがデビューして、日本のポップスを盛り立てた。そこから生まれたポップスの楽曲が名曲となって、今でも歌われている。ジャニーズ音楽には、今でも心に残る名曲がない。
 ジャニー喜多川は、スター誕生のプロセスでは演出力があっても、裏で未成年の少年たちへの性加害を続けていた。悍ましい実態が明らかになるとともに、今日も心身共に性被害の後遺症に苦しむ人々の実態も生々しい。性被害に苦しみながらも、声を上げ出した元ジャニーズ・タレントたちがワニズアクションを結成して、性犯罪に関する講演活動を続けている。
 大人が純真な子どもの性を弄び、思うがままに支配した罪は重い。ジャニーズの他にも、芸能プロダクション・テレビマンによる性被害はかなりあるだろう。芸能界の性被害もどんどん炙り出して、風通しの良いものにする時ではなかろうか。その意味でも、ジャニーズ問題がもたらしたものは大きい。
 名古屋芸術大学の学長問題に端を発したセクハラ事件は、金儲け第1の川村大介理事長・濱田誠経営本部長が、それまで学長を務めた竹本義明氏、音楽領域の教職員たちが推した作曲家、宮川彬良氏を退け、元TBS社員、アート東京代表理事を務めた來住尚彦氏を強引に学長に就任させたことに始まる。竹本氏を「病気」と称して、大学から追放した。來住氏はテレビマン時代、ジャニーズと癒着、ジャニー喜多川に可愛がられたと公言して、顰蹙を買った上、名古屋芸術大学のオープンキャンパスで、舞台芸術領域、ミュージカルコースの学生たちへのセクハラ事件を引き起こしてしまった。また、大学での講義の際、学生たちへのセクハラをやっていたことも明らかになった。この時点で、大学学長に不適任な人物だったことが明らかになった。
 それでも、強引に学長に就任させた川村理事長・濱田経営本部長の罪は重い。学生たちによる抗議展覧会も開かれ、取材にやって来たジャーナリストを追い払うことまでやった。來住氏が今年度のオープンキャンパスでは、食堂で贅沢三昧だったという証言もあった。ジャニーズと癒着した人物が大学学長になって、セクハラ事件を引き起こした事実は消えない。ここ最近、学生たちの間で事件が風化しつつあることは残念である。そんな中でのNHKスペシャル放送を見ると、You Tubeでは厳しい批判が出た。名古屋芸術大学の教職員・学生・保護者・卒業生たちは、NHKスペシャルを見ただろうか。來住氏の事件を風化させていいか。考えて欲しい。
 來住氏のセクハラ事件全体を見ると、日本の学問・文化をはじめ、社会全体がジャニーズ化したことを裏付けた結果である。見せかけに囚われ、中味がなくなった。川村理事長・濱田経営本部長は金儲け第1に考え、見せかけとして來住氏を学長にしたことが、セクハラ事件を引き起こしたと言ってよい。大学までジャニーズ化して、人寄せパンダ感覚で学長を選ぶようになった。学問の世界・最高学府たる大学がジャニーズ化したことも、來住氏のセクハラ事件の背景にもなった。
 大学までジャニーズ化した日本の現実を見ると、來住氏のセクハラ事件は起こるべくして起こった。この現実を踏まえ、社会が脱ジャニーズ化して、性虐待を許さない、子どもの人権・命を守ることを徹底する時である。名古屋芸術大学の教職員・学生・保護者・卒業生の皆さんが、NHKスペシャルを見たことによって、声を上げ続け、社会と連帯して、脱ジャニーズ化を進めてほしい。
 

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