ジャニーズ問題と統一教会 名古屋芸術大学、來住尚彦学長のセクハラ事件を斬る

 ジャニーズ問題と統一教会について、統一教会問題に詳しい紀藤正樹弁護士は、次のように指摘する。
「旧統一教会は1980年代から霊感商法が問題になりましたが、60年代には既に学生をターゲットにした『原理研究会』の活動が活発でした。多くの学生が引きずり込まれ、『親泣かせの原理運動』と社会問題化しました。ところが旧統一教会の問題は刑事事件としては扱われてこなかった経緯があります。社会的な背景として、こうした問題は『家族の問題』で警察は介入できないという認識があったのだろうと思います。
 ジャニーズ問題も、60年代にジャニー喜多川氏の少年たちへのわいせつな行為が既に民事裁判でも問題にされています。80年代からはジャニー氏による性的虐待を告発する本が複数出版されました。旧統一教会と時期を同じくして起きていますが、ここでも警察は動いていません。」
紀藤氏は、どちらも同じ時期に問題となったこと、警察が動かなかったことでは共通すると述べた。どちらも警察が動けば、歴史が大きく転換しただろう。
 紀藤氏は、ジャニーズ問題についても、統一教会と同じ視点を指摘する。
「統一教会の問題と同じように、ジャニーズでの児童虐待も、ジャニー氏に子どもを預けた『家族の問題』として認識され、刑事事件として動きにくい背景があったと思います。」
統一教会・ジャニーズ問題も家庭の問題とされたこと。ジャニー喜多川の性被害事件発覚を遅らせた、最大の原因だった。
 ジャニーズ問題・統一教会に共通することは、政治・行政との癒着があったからだとする、紀藤氏の指摘は重い。
「メディアとジャニーズ事務所の癒着のような関係は事実としてあると思いますが、より本質的な問題として、問題が発覚したあとに、ジャニーズ事務所に警察が入らなかったことの検証は必要だと思います。
 つまり、ジャニーズが警察など行政と強いつながりを持っていたために、警察の介入を許さなかったのではないか、ということです。
 ジャニーズ事務所はそのタレントを『1日警察署長』『○○大使』を務めさせるなどして広告塔として広い範囲で行政とのつながりをつくっていました。
 ジャニー氏の性加害については、99年に週刊文春が報道しています。この報道を巡っては、民事裁判でしたが、東京高裁が性加害の記事の真実性を認めた判決を出し、2004年に最高裁で確定しています。
 しかし、その後も、警察が動くことなく、ジャニーズ事務所は売り上げを伸ばし続け、その陰で被害が拡大していたわけです。
 旧統一教会の場合は、政治との癒着の中で、警察が取り締まれない状況もあったのではないでしょうか。その結果、統一教会の問題もジャニーズの問題も50年以上放置される事態になりました。」
統一教会の場合、2022年7月に起きた安倍晋三元首相銃撃事件で、安倍元首相が亡くなったことで発覚、国会・社会での追及が厳しくなった。紀藤氏は、ジャニーズ問題について、次のように結論づける。
「いずれの問題も、警察が法令を厳格に適応して対応していれば、ここまで被害は大きくならなかったでしょう。なぜ警察が動かなかったのか、行政や政治との関係についても検証していく必要があると思います。」
行政・政治がジャニーズ・統一教会と癒着しすぎたことによって、問題が大きくなったことは当然の帰結である。
 紀藤氏は、ジャニーズ問題・統一教会について、社会全体が許さないことが大切だと結論づける。
「被害者が大きな声をあげないと救済されないような状態になっているのは大きな問題です。
 旧統一教会については解散命令の請求が出されましたが、例え命令が出たとしても、宗教団体としては残ります。こういう団体が大きくならないように社会的な監視が必要だと思います。
 例えば欧米では、『内心の自由』には踏み込まない形で、誰であっても『これをやってはいけない』という逸脱行為については法律を適切に運用して、行き過ぎた宗教活動を規制しています。日本でもきちっと議論して、ルールをつくることができれば、旧統一教会のような団体が大きくなることは防げたと思います。
 ジャニーズ問題にしても、児童虐待は家族の問題などではなく、公共の福祉にかかわる刑事事件なのだという認識を持つ必要があると思います。
 旧統一教会にしてもジャニーズ問題にしても、警察が動かなったことの検証は必要ですが、同じような問題を許してはいけないのだという認識を個々人が持つ必要があると思います。」
児童虐待は公共の福祉に関わる刑事事件である。紀藤氏の指摘は重い。フリーライター、今一生氏が子どもの人権・命を守ることの大切さを発信し続け、ジャニーズ問題はもとより、名古屋芸術大学で起こった來住尚彦学長のセクハラ事件も発信して下さったことを思うと、頭が下がる思いである。
 ジャニーズ問題・児童虐待は公共の福祉に関わる刑事事件であることを、私たちはしっかり確認する時である。來住氏がジャニーズ事務所・ジャニー喜多川と癒着、ジャニー喜多川に可愛がられたと言って、顰蹙を買ったり、名古屋芸術大学の学生たちへのセクハラ事件を引き起こした事実の重さを考えると、大学学長にしてはいけなかった人物だったことを改めて思い知る。
 紀藤弁護士にも、名古屋芸術大学で起こった來住尚彦学長のセクハラ事件を伝えた上、名古屋芸術大学の教職員・学生・保護者・卒業生の支援に当たっていただきたいことを伝えたい。この事件全体を1人でも多く伝え、支援して下さる方々を増やしたい。

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