ベート―ヴェン、メンデルスゾーンを当時の響きで聴くと

 テレビ朝日「題名のない音楽会」、放送60周年記念として、バッハ・コレギウム・ジャパン特集として24日は、鈴木雅明・優人親子によるバッハ、31日は、鈴木優人によるベート―ヴェン、メンデルスゾーンの作品を当時の響きで聴くコンサートとなった。
 ベート―ヴェンは交響曲第5番、Op.67、第1楽章のコーダ、第4楽章再現部からを取り上げた。第1楽章を聴くと、音楽の推進力の見事さが際立った。第4楽章では、トロンボーンの響きが透明で、透けるような響きだった。第1楽章、第3楽章の重々しさから解放され、勝利の歌が響いて来るようだった。現代のオーケストラではもっとストレートであり、かなり重厚な響きになっている。楽器の性能が進歩したことになるだろうか。抜粋ではもったいないし、全曲を聴いてみたかった。
 メンデルスゾーンは劇音楽、「真夏の夜の夢」から序曲、ロマン主義の名作で、メンデルスゾーンはプロイセン国王、フリードリッヒ・ヴィルヘルム4世のもと、宮廷礼拝堂学長として仕え、劇音楽の作曲にも携わっている。シェークスピアの名作「真夏の夜の夢」に基づく12曲の劇音楽からなる。「序曲」Op.21が単独で作曲、劇音楽 Op.65は国王の命によって作曲した。フリードリッヒ・ヴィルヘルム4世は序曲を聴いて大変感動たため、劇音楽を作曲するよう命じた。
 「序曲」では、夏の夜、妖精たちのささやきが聴こえてくるようだった。「結婚行進曲」では、チューバの先駆となる楽器、オフィクレイドの紹介があった。壮麗であっても、輝かしさ、軽やかさが感じられた。
 ベート―ヴェンが交響曲にトロンボーン、コントラファゴット、ピッコロを加え、オーケストラを大掛かりなものとした。シューベルト・メンデルスゾーン・シューマンは、トロンボーンを加えた3管編成を維持しつつ、オフィクレイドを加えた4管編成、オフィクレイドがチューバに発展、4管編成が中心となって、今日に至った。ブラームスでは4管編成となっている。オフィクレイドのシャープで鼻にかかったような甘い音色が、チューバのふっくらした音色に発展したことが伺える。ヴァーグナーの場合、オーケストラの音色をフルに生かし、オペラのオーケストラの音色を豊かにして、ドラマの進行に活用していった。それが、イタリアのヴェルディ、プッチーニにも活かされたと言える。イタリアでのヴァグネリズムは、ゲルマニズムと呼ぶべきだと考えている。ヴァーグナー、ブラームスの音楽がイタリアに与えた影響は大きく、ドイツの重厚さ、イタリアの明るさを如何に受容、かつ調和させるかにあった。
 当時の楽器を知ることがオーケストラの変遷を知ることとなる上、音楽ホールの規模も大きな影響がある。楽器の性能の発達により、ホールの音響にも変化が現れた。ヨーロッパの名ホール、アメリカの音楽ホールなどの音響が如何にして作られたかもわかる。
 ただ、30分はもったいない。最低1時間あった方がじっくり音楽を聴き、理解するには必要ではないかと考えてしまう。このあたりをもっと考えていただけると幸いである。
 メンデルスゾーンの言葉である。
「芸術家の第一条件は偉大なものに敬意を払い、頭を下げること。」
古典に敬意を払うこと。今でも立派に通用する名言である。

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