クリスマスの音楽

 テレビ朝日「題名のない音楽会」、クリスマス・イヴにちなみ、クリスマスの音楽特集となった。まず、ルロイ・アンダーソン「そりすべり」から始まる。古き良きアメリカの光景を表現したもので、アーサー・フィドラー、ボストン・ポップス・オーケストラの演奏が日本で発売されたことも相まって、クリスマスの定番となった。
 シューベルト「アヴェ・マリア」、日本だけがクリスマスの定番となっている作品である。ウォルター・スコット「湖上の美人」での少女の祈りの歌で、クリスマスと関係なく歌われている。藤木大地の歌唱が見事だった。
 最後はチャイコフスキー「くるみ割り人形」から「トレパック」「花のワルツ」、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、ロシアへの風当たりが厳しくとも、チャイコフスキーの音楽の見事さは変わらない。バス、岸本力氏がロシア音楽をやり続けることへの苦悩を語ったことを思うと、無益な戦争が終わることを願いたい。バレエ「くるみ割り人形」のポスターが出ると、クリスマスが近いことを知る人も多いほど、作品として定着している。それも思うと、戦争が終わり、ロシア音楽が本当に聴ける日が来てほしい。
 クリスマスと言えば、ヘンデル「メサイア」も定番である。東京芸術大学は、毎年、東京文化会館で「メサイア」上演を行い、収益を福祉団体に寄付している。「メサイア」が慈善事業と結びついていることによる。バッハ・コレギウム・ジャパンによる「メサイア」上演も定番となっている。
 バッハ「クリスマス・オラトリオ」ももっと取り上げるべき作品である。クリスマスの第1部、新年の第2部に分かれるとはいえ、イエス・キリスト降誕から東方の3人の博士たちがイエスに会うまで、欧米では年末年始はクリスマスとなる。新年、元日がイエス・キリストの割礼・命名日であり、1月6日、東方の3人の博士がイエスに会った日になり、クリスマスは終わる。そうしたことを考えると、クリスマス・新年を共に祝う習慣も納得がいく。この作品もクリスマスにどんどん取り上げ、定番にして、クリスマス・新年を共に祝う習慣も広まってほしい。ヘンデルが尊重され、バッハが貶められているようなことはなくなってほしい。バッハも素晴らしいクリスマス作品を遺した以上、クリスマスにもバッハ「クリスマス・オラトリオ」の上演が定番化されることを切に望みたい。

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